GovTechでオンライン申請が増えた時、窓口で住民にどう案内する?現場でできる操作説明の工夫
GovTechの導入により、自治体でも様々な申請手続きのオンライン化が進んでいます。これにより、住民の方は自宅などから便利に手続きできるようになり、窓口の待ち時間短縮や業務効率化といった効果が期待されています。
しかし、オンラインでの手続きに慣れていない住民の方もいらっしゃいます。特に高齢の方やデジタルデバイスの操作に不安がある方にとって、新しいオンライン申請システムはハードルが高く感じられるかもしれません。このような状況において、窓口で住民の方へどのようにオンライン申請システムや手続き方法を案内し、サポートしていくかは、現場の重要な役割となります。
この記事では、GovTech導入によってオンライン申請が増えた自治体窓口で、住民の方に寄り添った効果的な案内を行うための具体的な工夫や、現場でできる準備について解説します。
GovTech導入で窓口業務に生まれた変化
GovTechによる申請手続きのオンライン化は、窓口の混雑緩和やペーパーレス化といった直接的な効果をもたらしますが、同時に窓口で対応する職員の業務内容にも変化をもたらします。
- 手続き内容の理解の変化: 従来の紙ベースの手続きに加えて、オンラインシステムの操作方法やエラー時の対応など、ITシステムに関する知識が必要になります。
- 住民からの質問内容の変化: 申請する内容に関する質問だけでなく、「どうやって入力すればいいの?」「パスワードを忘れてしまった」「画面が進まない」といったシステム操作に関する質問が増加します。
- 窓口での対応の変化: 手続きそのものを受け付けるだけでなく、オンライン申請を試みたもののうまくいかなかった方へのサポートや、窓口でのオンライン申請支援といった役割が求められる場合があります。
このような変化に対応するためには、現場で働く職員が適切に準備し、住民の方に寄り添った対応を行うことが重要です。
住民への効果的な案内方法:基本の考え方
オンライン申請システムを住民の方に利用していただくためには、丁寧で分かりやすい案内が不可欠です。案内を考える上での基本の考え方をご紹介します。
- 住民のITスキルにはばらつきがあることを理解する: 全ての住民がスムーズにオンライン操作できるわけではありません。個々の住民の状況(年齢、ITリテラシー、持病など)を考慮し、忍耐強く対応する姿勢が大切です。
- 専門用語を避ける: システムに関する専門用語は使わず、誰にでも分かる平易な言葉で説明します。例えば、「URL」ではなく「インターネットのアドレス」、「ログイン」ではなく「サービスに初めて入る」といったように言い換える工夫が必要です。
- 操作手順を具体的に伝える: 「ここをクリックして、ここに情報を入力します」といった具体的な指示を行います。「たぶん大丈夫だと思います」といった曖昧な表現は避けます。
- 視覚的な情報も活用する: 口頭での説明だけでなく、画面のコピーを使った手順書や操作動画などを活用すると理解が深まります。
- 不安を取り除く: 住民の方が「間違えたらどうしよう」「個人情報が漏れたら怖い」といった不安を感じている場合があります。「大丈夫ですよ」「一緒に確認しながら進めましょう」といった声かけで安心感を提供します。
- どこまでサポートするか明確にする: 窓口でのオンライン申請サポートの範囲(どこまで操作を手伝うか、どの段階まで確認するかなど)を事前に定めておくことも、現場の混乱を防ぐ上で有効です。
窓口での具体的な案内方法の工夫
現場で実践できる具体的な案内方法の工夫をいくつかご紹介します。
- 分かりやすい操作ガイドの作成:
- システム画面のスクリーンショットを豊富に使用し、クリックする場所や入力する内容を矢印や枠で分かりやすく示します。
- 文字サイズを大きくし、簡潔な文章で手順を記述します。
- 操作に詰まりやすいポイントやよくあるエラーの対処法をまとめて記載します。
- 印刷したガイドを窓口に置くほか、ウェブサイトに掲載しQRコードを窓口に掲示するといった方法もあります。
- よくある質問(FAQ)の整備:
- 住民から寄せられるシステム操作や手続きに関する質問とその回答をまとめます。
- FAQは職員が参照するだけでなく、住民にも提供できるように、ウェブサイトや印刷物として整備します。
- 窓口での操作支援スペースの検討:
- 希望する住民向けに、タブレット端末などを設置したオンライン申請支援スペースを設けることも有効です。職員が簡単な操作説明や入力補助を行うことで、その場で手続きを完了できる場合があります。
- ロールプレイングによる職員間の知識共有:
- 職員同士で住民役と職員役に分かれてオンライン申請の案内を練習します。これにより、説明の仕方や住民がつまずきやすいポイントを事前に把握できます。
- システム提供ベンダーとの連携:
- 住民向けの操作ガイドやFAQの作成について、システム提供ベンダーに協力を依頼します。専門的な知識を持つベンダーが作成した資料は、より正確で網羅的な情報を提供できる可能性があります。
- 住民から多く寄せられる質問や操作に関する要望をベンダーにフィードバックし、システムの改善や機能追加に繋げてもらうことも、長期的な住民サービスの向上に繋がります。
現場職員が準備すべきこと
スムーズな住民案内を行うために、現場で働く職員はどのような準備をすれば良いのでしょうか。
- オンライン申請システムの操作を習熟する:
- まずは職員自身がシステムを何度も操作し、利用者の視点から手順や分かりにくい点を把握します。実際に自分で申請手続きを最後まで行ってみることが重要です。
- 職員向けの操作研修があれば積極的に参加します。
- システムに関する基本的な知識を身につける:
- システムのログイン方法、パスワード再設定の手順、推奨環境(使用できるブラウザなど)、エラーコードが出た場合の一般的な対処法など、住民から質問されそうな基本的な事項を理解しておきます。
- 住民向け案内資料の作成・確認:
- 作成された操作ガイドやFAQを読み込み、内容を理解します。必要であれば、住民にもっと分かりやすいように現場の言葉で補足説明を加える準備をしておきます。
- 自分で案内資料を作成する場合は、IT部門やシステムベンダーに内容の正確性を確認してもらいます。
- ロールプレイングや模擬対応を行う:
- 想定される様々な質問や状況(「スマートフォンを持っていない」「メールアドレスがない」「入力方法が分からない」など)を想定し、他の職員と練習することで、実際の対応に自信を持って臨めるようになります。
IT部門やベンダーとの連携
住民への円滑な案内には、IT部門やシステム提供ベンダーとの連携も欠かせません。
- 住民からの声をフィードバックする: 住民から受けた質問や要望、システムへの不満などをIT部門やベンダーに具体的に伝えます。これにより、FAQの充実、操作ガイドの改善、さらにはシステム自体の改修に繋がる可能性があります。
- 案内資料作成への協力を依頼する: 前述の通り、ベンダーに住民向け操作ガイドやFAQ作成の協力を依頼します。
- 職員向けの研修機会を設けてもらう: IT部門やベンダーに、現場職員向けのシステム操作研修や質疑応答の機会を設けてもらうよう相談します。
まとめ
GovTechによるオンライン申請の推進は、住民サービスの向上に大きく貢献するものですが、その効果を最大限に引き出すためには、現場である窓口での丁寧な住民サポートが不可欠です。
住民一人ひとりの状況に合わせた分かりやすい案内、具体的な操作説明、そして不安を取り除くための声かけは、オンライン申請システムを安心して利用していただくために非常に重要です。また、操作ガイドの整備や職員間の情報共有、IT部門やベンダーとの連携といった現場での準備と工夫が、スムーズな案内を実現し、結果として住民満足度の向上と職員の業務負担軽減に繋がります。
GovTechの導入は、単にシステムを入れるだけでなく、住民サービスのあり方そのものを見直す機会でもあります。現場で働く職員が、住民の方に寄り添いながら新しいサービスを共に活用していく姿勢が、GovTechの効果を地域全体に行き渡らせる鍵となります。